さて新型コロナウイルス関連のニュースが、連日のようにトップ項目で報道されていますね。
老健で働いている筆者は、戦々恐々とニュースを注視しています。
もともと、めちゃくちゃ免疫が弱っている高齢者が、集団生活しているわけですから。
わたしら介護従事者はウィルスを持ち込まないよう、また媒介しないよう、毎日必ずマスクと手袋をつけ、手洗いとアルコール消毒を徹底し、感染対策をしています。
軽い風邪でも、あっというまに高熱→意識不明にり救急搬送されてしまう、本当にデリケートな高齢者。
先日も、もともと喘息気味だったOさんが、突然熱発して呼吸困難に。
肺炎で病院に救急搬送されました。
ただの風邪であれ、高齢者には命に係わるわけです。
そこに来て、この感染症の拡大は非常に恐ろしい・・・。
感染症に対して免疫の弱い高齢者のために、子供たちのために、妊婦さんのために、持病のある人々のために、日本政府には充分すぎるくらい充分に感染症対策を取っていただきたいものです。
しかし政府対応を見ていると、「本当に適切な対策が取られているんだろうか?」と疑念を持たざるを得ません。
しかしその疑いが「現実である」という裏付けを、ある方が動画で上げておられます。
動画に出ていらっしゃる方は、感染症の専門家・岩田健太郎医師。
(まったく門外漢の私は存じ上げませんが)どうやらその道では相当権威のある方だそうな。
アフリカのエボラ出血熱、中国のSARSなどの実際の現場にも立ち合い、国際基準で活動されてきました。
で、今回、ヤバイとうわさのダイヤモンドプリンセス号の中に入り、船内をご覧になった同医師。
「それはもう、ヒドイものでした」・・・だそうです。
なにがひどかったか、というと。
- 船内は感染症対策がしていない
- 医療従事者も「自分は感染する」と思っている
- 厚労省の官僚に進言しても改善されない
- 感染対策のプロが船内に1人もいない
岩田医師がおっしゃるには・・・
「船内には基本的な感染症対策がされていない」とのこと。
つまり感染症対策の基本中の「き」であるレッドゾーンとグリーンゾーン、危険域と安全域が決められていないのだそうです。
どこが安全で、どこからがウィルスに汚染されているのか、それがわからない状態で、手袋やマスクをしても全く意味がない、と岩田医師はいいます。
また「医療従事者が自分が感染しても仕方がない」と考えていることは、感染症予防の観点ではとても非常識なことなのだそうです。
自ら討ち死にする医療従事者の心意気はすばらしいかもしれませんが、一歩間違えば「感染拡大に一役買うメイワクな医者」になりかねません。
そして一番サイアクなのが、専門家の見地から現場のトップに改善点を進言しても、一切聞く耳を持たれないのだとか。
結果的に、権力のある「誰か」から岩田医師は、「船から出ていくように」命令されてしまったのだそうです。
「私がいなくなると、感染症のプロが1人もいなくなりますがいいんですか?」
岩田医師が親切心からそう言っても、ムダでした。
なんなんでしょうか、これは。
笑えないコントのようですね。
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感染症や災害をテーマにした小説や映画、ドラマなどたくさんありますが、もしこれが創作だったらもうちょっとマシな展開じゃないかという気がします。
いくらガチガチのシガラミがあったとしても、石頭の上司がいても、主人公が自由に動けない設定だったとしても、ドラマだったらまだ救いがあります。
でも現実は、まったく救いがありません!
現実の権力者は、想像以上に他人のいうことに耳を貸さないんです、たとえそれが権威のある専門家であったとしても。
他人の言うことに従ったら死ぬ病なのかもしれませんが。
そうしているうちにも感染対策は遅れ、どんどんと日本全国にウィルスが広がっていってしまいます。
わたしは今回の岩田医師の動画を見て、日本はおそらく中国と同等か、それ以上にひどい状況になるのではないかという危機感を覚えました。
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追記
2002/2/20(木)
本日、岩田医師がYouTubeに挙げた動画が削除されました。
動画を削除した理由について、岩田医師は次のようにコメントしています。
「ダイヤモンドプリンセス号内で改善がなされたという情報があり、懸念していたゾーニングが整えられたと聞いた」
「乗客の二次感染に関するデータも示され、船内で隔離が行われた2月5日以上に二次感染が拡大していないことが明らかになったため」
「動画で意見を広げること、注意を促す必要はなくなったと考えて動画を削除しました。」
・・・・とのこと。
しかし「船で目にしたことへの意見は、変えていない」ということです。
岩田健太郎医師が動画を削除されたあと、BBCの取材に答えているものが残っていました。
ご覧になりたいという方は、こちらをどうぞ!
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私は介護従事者です。
お世話している方たちに愛情と愛着をもって日々接しています。
もちろん仕事として、お預かりした責任があるからという気持ちもありますが。
いつか1人で老いていくであろう、自分の将来の姿と重ねてみているのかもしれません。
その方たちの平穏な毎日を守ることだけが、わたしが今望んでいることなのです。
この感染症がどうか悪い夢だったように、早く終息を迎えればいいと祈るばかりです。